格ゲーは完全情報ゲーム?
格ゲーは完全情報ゲームである、という話をたびたび見かけます。各種ゲージなどのリソースや使用キャラは画面から明らかで、相手の取った行動も同様に画面上に表れます。対戦中の意思決定に必要な情報すべてが画面上から得られる、ランダム要素もない、だから完全情報ゲームだと。でも、本当にそうなんでしょうか?
完全情報ゲームとして例に挙げられるのはチェスや将棋です。一方、不完全情報ゲームの例はポーカーや麻雀です。
各局面は、プレイヤーの選択によって定まります。選択するためにはなんらかの情報に基づいて意思決定を行うわけですが、それに必要な情報がプレイヤー間ですべて開示されているものが完全情報ゲーム、一部不明なものは不完全情報ゲームであると定義されています。
先に挙げた例はすべてボードゲームでした。これらボードゲームは、基本的にターン制です。では、格ゲーは?
鉄拳もフレームに基づくターン制のゲームだと言われています。不利フレームを背負ってターンが終わったので何も出来ません、というわけではなく、攻守のターンが入れ替わるイメージでしょうか。
攻めのターンは分かりやすいです。攻めましょう。守りのターンになっても、プレイヤー側の取れる選択肢は豊富にあります。パワークラッシュやしゃがパン、ジャンステ、横移動など、相手が出しそうな手札に対して有効な防御行動や切り返しのカードを出すことができます。
お互いに攻守のターンでなにを選択するのか、そこを読みあって相手より上回れたときに勝ちを得ることができます。
さて、お互いがお互いの手の内を分かっている前提とします。手の内に対する対応も持っています。それでも、立つかしゃがむかの二択を選択しなければならない状況に追い込まれ、その決断をする瞬間、ここに運は介在しないのでしょうか?
格ゲーは不完全情報ゲーム
格ゲーが完全情報ゲームに挙げられるようなゲームと異なるのは、「相手がいつ、どの選択をするのかは分からない」ところです。
先ほど、攻守ターン制の話がありました。技でやりあっているタイミングであれば非常に分かりやすいです。が、お互いに「なにもしない」を選択したら?
お互いにどちらのターンでもない、無の時間が生まれます。気まずいですね。
気まずいので技を振ることにします。そうすると、相手もちょうど同じタイミングで技を振っていました。しかも、相手の方が発生が早い技です。そういうとき、「噛み合った」などと言って、天を仰ぎ見たりします。
この「噛み合った」というのは、完全情報ゲームのボードゲームでは発生し得ないです。そもそも、どちらのターンでもない、という状況が対戦中に発生しません。
先ほどの完全二択の話もそうですが、相手がその瞬間に何を選択するのか、という情報は互いの頭の中にしかありません。それは行動というかたちで、後から認知できるにすぎない。
どうしても運が関わってきます。もう少し技を早く振っておけばよかった、なにもしなければよかった。でも、その部分はあんまり考えても仕方がないことのような気がしますよね。
格ゲーは完全情報ゲームではないです。読み負けた、噛み合った。そういった運で左右されてしまう状況をできるだけ排し、期待値の高い行動を通し続けることが、安定して勝つために必要なのだろうなと思います。
最後に、BLACK LAGOON のロックの台詞が好きなので引用します。
運以外のあらゆることを塗り潰すのは定石だ。そうして隙間を埋めていって、運だけが純粋に残った時 最高の賭けになるのさ。
いつかそういう対戦ができるようになれるといいな。